この記事で解決できる困りごと
- 改善を進めるとき、論理的に詰める部分と“まずやってみる”部分のバランスが分からない
- 作業改善が途中で止まってしまい、継続できない
- 「もっと科学的に改善したいけれど、PDCAは重すぎる」「PDSだと根拠が弱い」などの悩みがある
この記事でここを目指そう
- PADSC(Plan–Analyze–Do–See–Check)の流れを理解し、使いどころを押さえる
- 小改善でも“分析”の質を上げるコツをつかむ
- 「やってみる × 学ぶ × 確認する」を素早く回して改善が継続する状態をつくる
「改善をやりたいけれど、闇雲に動くのは不安…」
「PDSは使いやすいけれど“分析” の要素も少し入れたい…」
生産現場の改善は
・やってみないと分からないこと
・動かしてみて初めて気づくこと
の連続です。
しかし一方で、根拠のない改善は再現性が弱く、続かなかったり品質が安定しなかったりします。
そこで役立つのが PADSCサイクル(Plan–Analyze–Do–See–Check)。
PDSの“軽さ”に、Analyze(分析)とCheck(評価・標準化)を組み合わせた、現場改善に最適化されたサイクルです。
この記事では以下を分かりやすく解説します。
- PADSCサイクルとは?
- 特徴
- 使いどころ
- 生産現場の活用例
- 成功のコツ
改善プロセス全体像はこちら:
工場改善プロセスの全体像 製造業で成果が出る改善ステップと進め方を解説
代表的な4つの改善サイクルの説明はこちら:
PADSCサイクル
Point:PDCAサイクル
<PADSCサイクルとは>
Plan(計画)→ Action(実行)→ Do(試行)→ See(振り返り)→ Check(定着確認)
の5ステップで、“小さく・早く改善を回す”ことに特化した手法。
PDCAよりも「試行(Do)」を前倒しし、実践しながら学びを積み上げるのが最大の特徴。
失敗コストが小さく、スピード感のある改善に向いている。
<特徴>
- 小さく試すことを前提にした“高速改善”
- 現場に合う形に“動かしながら調整”
- 誰でも回せる“シンプル設計”
- 改善の「定着」まで考えられた流れ
<使いどころ>
- 小規模・短サイクルの改善
- 実験的に改善したいテーマ
- 現場主体で回したい改善活動
- スピードが重要なテーマ
1.PADSCサイクルとは?
PADSCは
Plan → Analyze → Do → See → Check
の5ステップで改善を回す方法です。
- Plan :計画
- Analyze:要因の仮説づくり・分析(軽めでOK)
- Do :やってみる
- See :振り返る・気づく
- Check :改善の有効性確認・標準化
分析を加えつつも、PDCAほど重くなく、PDSほど軽すぎない
「ちょうどいい改善サイクル」として現場で使いやすいのが特徴です。
Plan(計画)
目的・現状・改善案を簡潔に決めるステップ。
例:作業台の高さを変更して作業負荷を下げたい…など。
Analyze(分析)
Planの内容を裏付ける“軽い分析”を行うステップ。
例:動画を見て動作数を確認/工程観察でムリ・ムダを把握/作業者のヒアリング…など。
※DMAICのAnalyzeのような重分析ではなく、「改善案の妥当性を確認する程度」がポイント。
Do(実行)
小さく・短時間で試す。
例:仮治具で試す、置き位置をガムテープ留めで変えてみる、など。
See(振り返り)
現地現物+数字で「何が起きたか?」を知るステップ。
例:動作が本当に減った? やりにくくなった点は? など。
Check(評価・標準化)
改善効果を確認して
- 定着させる(標準化)
- 次の改善へつなぐ(次サイクルへ)のどちらかを決めるステップ
PDSにはない「標準化判断」が入るため、改善の再現性や継続性が高まります。
2.PADSCサイクルの特徴
PADSCを一言で表すと
『軽い分析 × 素早い試行 × 再現性の確保』
ができる改善サイクルです。
その特徴を3つにまとめます。
① PDSより“分析”が入るので改善の再現性が高い
PDSは軽くて速い反面、
「なぜ良くなったのか/悪くなったのか」の根拠が弱くなることがあります。
PADSCではAnalyzeで“簡易分析”を入れるため、
・再現性が高い
・人が変わっても安定しやすい
・改善の説得力が強い
というメリットがあります。
② Do → See のスピードはPDSと同じく高速
分析と言っても DMAICのような重分析ではなく、軽い現場分析 が中心。
そのため、
Plan → Analyze → Do → See
と高速で回すことができ、
「やってみないと分からない改善」への強さはPDSと同じです。
③ Checkで“標準化 or 再トライ”の判断ができる
PDSでよくある課題:
- 改善したけど結局元に戻る
- その場限りで終わってしまう
- 改善が定着しない
PADSCは最後に Check(確認・標準化) があるため、改善の定着性が高くなります。
3.PADSCサイクルの使いどころ
PADSCが特に力を発揮するのは次の6つです。
① 改善の“根拠”を少しだけ強化したいとき
PDSでは軽すぎる、PDCAでは重すぎる。そんなときに最適。
例:
- 作業時間の短縮(動作数を軽く分析)
- 不良の軽微な低減(原因を仮説化)
- 作業手順の改善(動画で観察)
② 小規模改善でも分析を入れたいとき
現場カイゼン(小改善)でもAnalyze を入れることで改善の質が上がります。
例:
- 歩行ムダの分析(歩数カウント)
- 動作の見える化
- モノの置き位置の検討(スケッチ分析)
③ ライン立ち上げの初期トライ
パイロットラン中は問題が次々に出ますが、
「なぜ起きたか?」を軽く分析してから対策すると改善効果が安定します。
例:
- ボトルネックの仮説検証
- 作業者動作の分析(動画観察)
- 治具の使い勝手の要因抽出
④ 試作・試運転などトライ&エラー案件
分析 → 試す → 気づく の循環を高速で繰り返すのに向いています。
例:
- 設備条件の最適化
- 試験治具の改善
- 新規作業手順の評価
⑤ 停滞した改善を再始動したいとき
PDCAで止まっている改善を「軽い分析を挟んだPDS」で回し直すイメージで使えます。
例:
- 会議だけで進まない改善
- 仮説が曖昧で迷走している改善
- 対策案が多すぎて決められない場面
⑥ PDCA(プロジェクト管理)との併用
- 日々の改善 → PADSC
- プロジェクト → PDCA / DMAIC
と使い分けることで改善効率が高まります。
4.PADSCの活用例:部品の取り出し時間を短縮したい場合
① Plan(計画)
目的:取り出し時間を10%短縮
現状:箱が左側にあり取りにくい
改善案:箱の位置を正面に変更する
② Analyze(分析)
動画を撮影し動作数をカウント
→「左に手を伸ばすときに迷いがある」ことを確認
→ 正面配置が妥当と判断
③ Do(実行)
箱の位置を仮移動して動作確認
(テープで固定)
④ See(振り返り)
結果:動作がスムーズになり5%短縮
気づき:さらに10cm右側の方が自然と手が伸びる
⑤ Check(確認・標準化)
効果あり → 正式に置き位置を標準化
同時に「右側配置案」の再トライを次のサイクルに設定
5.まとめ
- PADSCは PDSの軽さ+ちょい分析+標準化判断 を組み合わせた改善サイクル
- 「計画 → 軽い分析 → 試す → 見る → 確認」で改善を高速回転
- 小規模改善でも再現性が高く、定着しやすい
- ライン立ち上げ、試作、現場改善、QCサークルに特に効果的
- “やってみる → 気づく → 確認する” の連続で改善が進む
活動内容ごとの向き・不向き
| 活動内容 | PADSCの適性 |
|---|---|
| 小改善・現場改善 | ◎ 非常に向いている(軽分析が有効) |
| 試作・パイロットラン | ◎ 気づきと分析のループが早い |
| 日々の改善活動 | ◎ 継続しやすい |
| 中規模プロジェクト | ○ 根拠を持ちながら進められる |
| 大規模プロジェクト | △ PDCAやDMAICの方が管理しやすい |
現場で改善が止まっているときは、
まず PADSCを軽く・速く回すこと から始めてみましょう。
6.成功のコツ
① Analyzeは“重くしない”
PADSCのAは「軽い分析」。
やりすぎると重いサイクルになり、改善が止まります。
② “まずやってみる”を忘れない
分析はあくまで方針確認。
Do(実行)まで最速でつなげるのが重要。
③ See(見る)を丁寧にする
改善の質はSeeで決まります。
現場観察+数字で気づきを得ること。
④ Checkで“標準化 or 再トライ”を判断する
改善の定着はCheckの有無で大きく変わります。
⑤ チームで回して改善を止めない
気づきを共有するとPlanの質が上がる。
改善の見える化をして継続性を確保する。