「忙しいのに成果が出ない」
「設備を増やしても楽にならない」
そんな現場の悩みは、
“やり方”に原因があるかもしれません。
方法研究とは何か
方法研究とは、
今行われている仕事の「方法(やり方)」そのものを対象にして、
ムダが少なく、効率が良く、作業者にやさしい
“最も良い方法”を追求するためのIE手法
です。
ここで言う「方法」とは、単なる作業手順のことではありません。
- 仕事の流れ(工程)
- 人の動き(作業・動作)
- モノの動き(運搬)
といった、仕事がどのように成り立っているかという「全体のやり方」を指します。
なぜ方法研究が必要なのか
現場で起きている問題の多くは、
設備や作業者の能力ではなく、仕事のやり方そのものに原因があります。
たとえば、
- モノが工程間を行ったり来たりしている
- 作業者が「探す・歩く・持ち替える」動作を何度もしている
- 運搬に時間を取られ、作業が進まない
これらはすべて、
仕事の方法が最適でないサインです。
方法研究は、
「昔からこうやっている」「当たり前になっている」仕事のやり方を、
一度ゼロベースで見直すための手法
だと考えるとイメージしやすくなります。
IE全体の中での方法研究の位置づけ
IE(Industrial Engineering)は、大きく次の2つに分けられます。
① 方法研究
- 目的:どうやるかを良くする
- 対象:仕事の流れ・作業方法・動作・運搬
- 役割:ムダの少ない「やり方」を作る
② 作業測定
- 目的:どれくらい時間がかかるかを測る
- 対象:作業時間
- 役割:評価・見積り・計画の基準を作る
つまり、
- 方法研究=質を良くする
- 作業測定=量を測る
という関係になります。

※IE(インダストリアル・エンジニアリング)の詳細はこちら
IE(インダストリアル・エンジニアリング)の全体像_IEとは何か?目的と役割をわかりやすく解説
方法研究の目的
方法研究の目的は、次の3点に集約されます。
- ムダな作業・工程をなくす
- 作業をやりやすく・早く・安全にする
- 品質・生産性・安全性を同時に向上させる
つまり、「頑張らなくても成果が出る方法」を作ること
が方法研究の本質です。
方法研究で見る3つの視点
「頑張らなくても成果が出る方法」を作るため、
方法研究では、現状を次の3つの視点から捉えます。
① 工程(プロセス)の視点
- モノや人は、どんな順番で流れているか
- 加工・検査・運搬・停滞はどうなっているか
- ムダな工程や遠回りはないか
これらは、仕事の「流れ」そのものを見る視点です。
② 動作の視点
- 作業者はどんな動きをしているか
- 探す・歩く・待つなどのムダ動作はないか
- 無理な姿勢や疲れやすい動作になっていないか
これらは、仕事をする「人の動き」を見る視点です。
③ 運搬の視点
- モノはどこからどこへ運ばれているか
- 距離・回数・量はどれくらいか
- 付加価値を生まない運搬が多くないか
これらは、仕事の中の「モノの移動」を見る視点です。
方法研究に紐づく代表的な分析手法
3つの視点から捉えるため、方法研究を進める際には、次の3つの分析手法を使い分けます。
① 工程分析
工程の現状を把握するために、
モノの流れ・人の流れを調査・分析する手法。
※工程分析の全体像はこちら:
② 動作研究
最良の作業方法を設定するために、
作業者の体の動き・目の動きを調査・分析する手法。
※動作研究の全体像はこちら
③ 運搬分析(マテリアル・ハンドリング分析)
付加価値を生まない運搬要素の現状を掴むため、
運搬距離・回数・量などのロスを定量的に分析する手法。
これらを組み合わせて、
「ムダのない最良の方法」を導き出すのが方法研究です。
※運搬分析の全体像はこちら

なぜ ”工程・動作・運搬” をセットで考える必要があるのか
方法研究というと、動作改善やムダ取りといった“作業そのもの”に目が向きがちです。
しかし実際の現場では、工程・動作・運搬のどれか1つだけを見ても、本当のムダは見えてきません。
なぜなら、現場のロスはこの3つが相互に影響し合って発生しているからです。
ここでは、なぜ方法研究で3つの視点をセットで考える必要があるのかを解説します。
① 改善の影響は必ず他の要素に波及するから
現場では、1つの改善が他の部分に必ず影響します。
例えば:
- 動作を短縮したら前工程が詰まった
- 工程を削減したら運搬距離が増えた
- レイアウト変更で動作が増えた
このように、工程・動作・運搬は独立した存在ではなく、常に連動しています。
どれか1つだけを見て改善すると、別のところで新たなムダが発生し、
結果的に全体最適から遠ざかってしまうことがあります。
② 真のムダは“境界”に潜んでいるから
現場の大きなロスは、単一作業の中ではなく、要素の境界にも多くあります。
例:
- 工程間の待ち時間
- 作業と運搬の切替ロス
- 運搬待ちによる停止
- 段取りの前後動作
動作だけ見ていると「忙しく動いている」と感じても、
工程や運搬を含めて見ると「実は流れが止まっている」ことがよくあります。
つまり方法研究は、作業単体ではなく“流れ全体”を設計する活動なのです。
③ 部分最適を防ぐため
方法研究で最も避けたいのが部分最適です。
よくある失敗:
- 動作改善で作業者は楽になったが、ライン全体は遅くなった
- 運搬削減で作業待ちが増えた
- 工程短縮で品質トラブルが増えた
これらはすべて、1つの視点だけで改善した結果です。
工程・動作・運搬をセットで見ることで、
- 改善の副作用
- 隠れたロス
- 全体への影響
を事前に把握できます。
④ 改善の優先順位を正しく判断できるから
3つをセットで見ると、どこから手を付けるべきかが明確になります。
例:
- 動作は最適でも運搬距離が極端に長い
- 作業は効率的でも工程構成が複雑
- 工程はシンプルでもムダ動作が多い
このような状態を俯瞰できることで、
「どこを変えれば最も効果が出るのか」
を判断できます。
⑤ 改善の再発防止につながるから
動作だけ改善しても、工程や運搬が変わらなければ、しばらくすると元に戻ります。
理由:
- 流れが悪いと人がムダ動作で調整し始める
- 運搬が多いと例外対応が増える
- 工程が複雑だと独自ルールが生まれる
つまり方法研究は、
一時的な改善ではなく「再発しない方法」を作る活動
です。
そのためには3つの視点を同時に設計する必要があります。
まとめ ”工程・動作・運搬” をセットで考える理由
方法研究で工程・動作・運搬をセットで考える理由は次の通りです。
- 改善は必ず他要素へ影響するため
- 真のムダは要素の境界にあるため
- 部分最適を防ぐため
- 改善の優先順位を正しく決めるため
- 改善を定着させ再発を防ぐため
方法研究とは、単なる動作改善ではなく、
「流れ・作業・移動」を一体で設計する活動です。
この視点を持つことで、改善は単発ではなく、現場の仕組みそのものを変える力になります。
改善と方法研究の関係
- 改善:結果を良くするための活動全般
- 方法研究:改善のための“分析技術”
方法研究を使うことで、「勘と経験の改善」から「再現性のある改善」へ
改善のレベルを一段引き上げることができます。
方法研究の基本的な進め方
- 現状をそのまま観察・記録する
- 工程分析で全体を把握する
- 動作分析で人のムダを見る
- 運搬分析でモノのムダを見る
- ECRS(排除・結合・再配置・簡素化)で改善案を出す
- 標準化する
方法研究の基本的な進め方
方法研究は「ムダを見つけて改善する活動」と思われがちですが、
実際は作業のやり方を設計し直すプロセスです。
やみくもに観察したり、思いつきで改善案を出しても成果は出ません。
ここでは、現場で使える“基本の進め方”を順番に解説します。
STEP1:対象作業を明確にする(テーマ設定)
最初に行うのは「どこを方法研究するのか」を決めることです。
対象選定のヒント:
- ボトルネック工程
- 作業時間が長い工程
- 不良・手戻りが多い工程
- 運搬が多い工程
- 作業者の負担が大きい作業
ポイント:
- 感覚ではなくデータを使う
- 現場の困りごとから選ぶ
ここを間違えると、いくら分析しても成果につながりません。
STEP2:現状作業を正しく把握する(事実の収集)
次に行うのは、現状のやり方を徹底的に理解することです。
実施内容:
- 作業観察
- 動画撮影
- 工程の流れ確認
- 運搬経路の確認
- 標準作業の確認
- 作業者へのヒアリング
注意点:
- 1回の観察で判断しない
- 正常時だけでなく例外作業も確認
- 思い込みで評価しない
方法研究の成否は、ここでほぼ決まります。
STEP3:工程・動作・運搬の3視点で分析する
収集した事実をもとに、3つの視点で分析します。
① 工程の視点
- 不要工程はないか
- 順序は適切か
- 待ち・停滞はないか
② 動作の視点
- ムダな動きはないか
- 両手の使い方は適切か
- 探す・持ち替える動作はないか
③ 運搬の視点
- 距離は長すぎないか
- 往復はないか
- 保管場所は適切か
この3つを同時に見ることで、全体最適の改善が可能になります。
※工程分析の全体像はこちら
※動作研究の全体像はこちら
※運搬分析の全体像はこちら
STEP4:改善の着眼点を整理する
分析結果から改善の方向性を考えます。
基本視点(ECRS):
- Eliminate(なくせないか)
- Combine(まとめられないか)
- Rearrange(順序変更できないか)
- Simplify(簡単にできないか)
この段階では、アイデアを広く出すことが重要です。
現場メンバーと一緒に検討すると、実行性が高まります。
※ECRSの詳細はこちら
【ECRSとは?】工場改善の基本フレーム|改善ネタが出ない人のための思考法
STEP5:改善案を設計する
改善アイデアを組み合わせて、新しい作業方法を設計します。
検討すべき内容:
- 工程構成
- 作業順序
- レイアウト
- 運搬方法
- 人員配置
- 安全性・品質
ポイント:
- 動作だけでなく流れ全体を見る
- 現場で再現できる方法にする
ここで初めて「新しいやり方」が形になります。
STEP6:検証・評価する(机上で終わらせない)
改善案は必ず現場で検証します。
確認項目:
- 作業時間
- 作業負担
- 品質への影響
- 安全性
- 現場の使いやすさ
可能であれば:
- トライアル運用
- 動画比較
などを行うと効果が分かりやすくなります。
STEP7:標準化・定着させる
改善は導入して終わりではありません。
必要な活動:
- 標準作業書の更新
- 教育・訓練
- 現場への展開
- 定着確認
ここを怠ると、現場はすぐに元に戻ります。
進め方のまとめ
方法研究の基本的な進め方は次の7ステップです。
- 対象作業を決める
- 現状を正しく把握する
- 工程・動作・運搬で分析する
- 改善の着眼点を整理する
- 改善方法を設計する
- 現場で検証する
- 標準化して定着させる
方法研究は単なる観察ではなく、
現場のやり方を再設計する体系的なプロセス
です。
この流れを守ることで、思いつき改善ではなく、再現性のある改善が実現できます。
方法研究を行う際に気を付けるポイント
方法研究は「ムダを見つけて改善する」ための強力な手法ですが、
やり方を間違えると現場の反発を招いたり、効果の出ない改善になってしまいます。
ここでは、よく起きる失敗例をベースに、特に気を付けたいポイントを解説します。
① いきなり改善案を考えない(まずは現状把握)
初心者に最も多いのが「現場を少し見ただけで改善案を出してしまう」ケースです。
方法研究の基本は
事実の把握 → 分析 → 改善検討
の順番です。
特に注意したい点:
- 思い込みでムダ認定しない
- 1回見ただけで判断しない
- 標準作業・条件・例外作業を確認する
改善は“理解(原因把握)の後”に行うものです。
② 部分最適にならないようにする
一工程だけを見て改善すると、全体では悪化することがあります。
よくある例:
- 作業時間短縮 → 前工程が詰まる
- 動作削減 → 品質低下
- 工程短縮 → 運搬増加
だからこそ方法研究では
工程・動作・運搬の3視点をセットで見る
ことが重要になります。
③ 作業者を評価対象にしない
方法研究は「人」ではなく「方法」を改善する活動です。
NG例:
- 作業者のクセを指摘する
- スピードだけで評価する
- “遅い人”扱いする
信頼関係を壊す大きな原因です。
意識すべき視点:
- 誰がやってもできる方法か?
- 教育に頼らず仕組みで改善できるか?
④ 異常時・例外作業を見落とさない
通常作業だけを見て改善すると、現場では使えない方法になります。
確認すべき内容:
- 段取り替え
- 品種切替
- 不良対応
- 部材不足時の対応
- 機械停止時の作業
「普段はこうしないんですけど…」
この一言に重要なヒントが隠れています。
⑤ 改善しやすいところだけを狙わない
初心者ほど、見た目で分かりやすい動作ばかり改善しがちです。
しかし実際の大きなロスは、
- 工程構成
- 流れの停滞
- 運搬距離
- レイアウト
など、上位構造に潜んでいることが多いです。
基本の優先順位は、
- 工程(流れ)
- 動作
- 運搬
です。
※上記の優先順位が原則ですが、現場改善では、物流・レイアウトのロスが大きい場合、
「工程 → 運搬 → 動作」の順で考える方が効果的なケースもあります。
⑥ 現場と一緒に考える
方法研究を“分析者だけの仕事”にすると、改善は定着しません。
効果的な進め方:
- 観察中に気づきを共有する
- 「なぜそうしているのか?」を聞く
- 改善案は一緒に検討する
現場はすでに多くの工夫をしています。
方法研究はそれを形式知化する活動でもあります。
ポイントのまとめ
方法研究で失敗しないためのポイントは次の6つです。
- 現状を理解する前に改善しない
- 部分最適に注意する
- 人ではなく方法を見る
- 異常時・例外作業も確認する
- 工程→運搬→動作の順で考える
- 現場と一緒に進める
これらを意識するだけで、方法研究の精度と現場への浸透度は大きく変わります。
まとめ
- 方法研究は、IEの基本中の基本
- 工程分析・動作研究・運搬分析の3点セットで考えることが重要
- 改善の第一歩は、現状を正しく「見える化」すること