この記事で解決できる困りごと
- 動作研究が「何を見る分析なのか」よく分からない
- 工程分析・時間研究との違いが曖昧
- 動作改善をどんな場面で使えばよいか判断できない
この記事でここを目指そう
- 動作研究の目的・内容・使いどころが整理できる
- 工程分析・時間研究との役割分担が理解できる
- 作業改善・治工具改善につながる分析の入口を掴める
「作業者が忙しそうなのに、生産性が上がらない」
「改善しても、現場があまり楽にならない」
そんな現場の悩みを解決する基本スキルが 動作研究 です。
動作研究とは、
作業者の体や目の動きを細かく分解・観察し、
ムダのない、やりやすい作業動作を見つけ出すIE手法です。
工程分析が「仕事の流れ」を見るのに対し、
動作研究は 人の動きそのもの にフォーカスします。
この記事では、
・動作研究の概要
・IE全体の中での位置づけ
・動作研究で見るポイント
・代表的な動作研究手法
・よくある失敗例
を、初心者にも分かりやすく体系的に解説します。
動作研究とは何か
動作研究(Motion Study)とは、
作業を構成している「人の動き(動作)」に着目して分析し、
疲労やムダの少ない最良の作業方法を見つけ出すIE手法です。
ここで言う「動作」とは、
- 手を伸ばす
- つかむ
- 運ぶ
- 置く
- 見る
- 探す
といった、作業を成り立たせている最小単位の人の動きを指します。
工程や作業手順よりも、さらに細かいレベルで仕事を捉える点が、動作研究の大きな特徴です。
工程分析が「工程全体の流れ」を捉える分析であるのに対し、
動作研究は個々の作業・個々の動作を対象とします。
そのため動作研究は、
IEの中でも最もミクロな視点で行う分析手法と位置づけられます。
動作研究はなぜ必要なのか
結論から言うと、
工程や作業が同じでも、「人の動き」次第で生産性も疲労も大きく変わるからです。
多くの現場では、
- 工程順は決まっている
- 作業内容も同じ
- 使っている設備・治具も同じ
それにもかかわらず、
- 人によって作業時間が違う
- 特定の作業だけなぜか疲れる
- ベテランは速いが理由が説明できない
といったことが起こります。
この差を生み出している正体が、
作業の中に含まれる「動作の違い」です。
工程分析・時間研究だけでは見えない世界がある
工程分析や時間研究は、非常に重要なIE手法です。
- 工程分析:工程全体の流れやムダな工程を見つける
- 時間研究:時間が長い工程、ばらつきの大きい作業を見つける
しかし、これらの分析で分かるのは
「どの工程・どの作業が問題か」までです。
- なぜ時間がかかっているのか
- なぜ人によって差が出るのか
その原因の正体までは見えてきません。
そこで必要になるのが、動作研究です。
ムダ・ムリ・ムラは「動作」に潜んでいる
作業を細かく分解して見ていくと、次のような動作が見えてきます。
- 無意識に手を伸ばしすぎている
- 部品を探す動作が毎回入っている
- 両手が同時に止まっている時間がある
- 「見る→探す→取り直す」というムダな流れが発生している
こうしたひとつひとつの小さな動作の積み重ねが、
- 作業時間の増加
- 作業者の疲労増大
- 作業品質のばらつき
につながっています。
動作研究は、
この「動作レベルのムダ」を見つけ、取り除くために必要な手法です。
動作を改善すると「楽になる=早くなる」
動作研究の改善で大切なのは、
無理に早くさせることではありません。
- 動作を減らす
- 動作を短くする
- 動作を自然な流れにする
つまり、作業を楽にすることが本質です。
その結果、
- 疲労が減る
- 動きが安定する
- 作業スピードが自然と上がる
という好循環が生まれます。
これが
「疲労を減らすことで、生産性を上げる」
という動作研究の考え方です。
動作研究の目的
動作研究の目的は、大きく次の2つです。
① 動作の中に潜むムダ・ムリ・ムラを見つけ、改善する
- ムダな手の動き
- 不自然な姿勢
- 無駄な持ち替え・探し動作
を排除し、
より効率的で、作業者に疲労の少ない動作を実現します。
② 作業動作のバラつきを分析し、最良の動作を設計する
- 複数作業者の作業方法の違い
- 同一作業者の作業手順のバラつき
を分析し、
誰がやっても同じ品質・同じ効率でできる作業動作を設計します。
IE全体の中での動作研究の位置づけ
IE(Industrial Engineering)は、大きく次の2つに分けられます。
① 方法研究
- どうやるかを良くする
- 工程・動作・運搬が対象
② 作業測定
- どれくらい時間がかかるかを測る
- 標準時間や計画の基準を作る
動作研究は、①方法研究の中で「人の動き」を扱う領域に位置づけられます。
- 工程研究:仕事の流れを見る
- 動作研究:人の動きを見る
- 運搬研究:モノの移動を見る
という役割分担です。
動作研究は何を分析するのか(3つの着眼領域)
動作研究では、主に次の3つの領域からムダを見つけます。
① 作業方法(身体の動き)
- 手の動きは最短か
- 両手が有効に使われているか
- 無理な姿勢になっていないか
② 治工具の使用
- 治具や工具は使いやすいか
- 持ち替えが多くないか
- 動作を助ける構造になっているか
③ 作業域(作業エリア)
- 部品・工具は適切な位置にあるか
- 作業域が広すぎないか
- 目線・手の届く範囲が最適か
この3領域をセットで見ることで、
動作改善・治具改善・配置改善につながります。
動作研究で見る3つの視点
動作研究では3つの視点で動作を確認していきます。
① ムダな動作はないか(付加価値のない動き)
まず最初に見るべきなのが、
付加価値を生まない動作が含まれていないかという視点です。
代表的なムダ動作には、次のようなものがあります。
- 探す
- 歩く
- 待つ
- 持ち替える
- 取り直す
- 両手が同時に止まっている
これらの動作は、
やっていても製品の価値は1ミリも上がりません。
特に重要なのは、
- この動作は、なくせないか?
- そもそも発生させない方法はないか?
という目で見ることです。
ムダな動作は、
作業時間・疲労・ミスのすべてを増やします。
② やりにくい動作・無理な動作になっていないか
次に見るべきなのは、
作業者に負担をかけていないかという視点です。
例えば、
- 前かがみになっていないか
- 体をひねりながら作業していないか
- 肩より上で作業していないか
- 片手作業になっていないか
こうした動作は、
- 疲れやすい
- 動きが不安定
- ミスやケガにつながりやすい
という特徴があります。
ポイントは、
- この動作、長時間やり続けられるか?
という問いです。
やりにくい動作は、必ずスピードも品質も落ちます。
③ 動作が標準化できているか(ばらつきの視点)
最後に見るべきなのが、
動作にばらつきがないかという視点です。
現場ではよく、
- 人によってやり方が違う
- ベテランだけ速い
- 教えるたびに説明が変わる
といった状態が見られます。
これは、
- 最良の動作が決まっていない
- 良いやり方が言語化・可視化されていない
ことが原因です。
動作研究では、
- 誰の動作が楽で安定しているか
- どの順序・どの組み合わせがよいか
を分析し、
「最良の動作」を設計・標準化していきます。
3つの視点は「同時」に見るのがコツ
この3つは、バラバラではありません。
ムダな動作が多い → やりにくい → 人によってばらつく
という関係になっていることがほとんどです。
そのため動作研究では、
- ムダはないか?
- 楽にできているか?
- 誰がやっても同じか?
を同時に見ることが重要です。
視点を持つだけで観察の質が変わる
動作研究は、
特別な分析表を書く前に、見る目を変えることが大切です。
この3つの視点を意識するだけで、
- 「なぜ時間がかかっているのか」
- 「なぜ疲れるのか」
- 「なぜ人によって違うのか」
が、現場で自然と見えてくるようになります。
まずはこの3つを見よう
動作研究で見るべき視点は、
- ムダな動作はないか
- やりにくい・無理な動作になっていないか
- 動作が標準化できているか
この3つです。
最初は、
「この動き、楽かな?ムダかな?」
と考えながら現場を見るだけでOK。
それが、動作研究の第一歩です。
動作研究の代表的な分析手法
動作研究では、
作業者の動きを観察し、ムダ・ムリ・ムラを見つけて改善につなげます。
その中でも、現場でよく使われる代表的な手法が次の2つです。
- 両手作業分析
- 微動作分析(サーブリッグ法)
どちらも「人の動作」を扱いますが、
見る細かさ(分析レベル)と使いどころが異なります。
① 両手作業分析
概要
両手作業分析とは、
作業者の左右の手の動きを同時に分析し、ムダや手待ちを見つける手法です。
作業を時系列で追いながら、
- 右手は何をしているか
- 左手は何をしているか
を並べて整理します。
何を見る手法か
両手作業分析で主に見るのは、次のポイントです。
- 片手が遊んでいないか
- 両手が同時に止まっていないか
- 手の動きが非効率な順序になっていないか
- 持ち替え・取り直しが多くないか
特に、「片手が仕事をしている間、もう片方の手は何をしているか?」
という視点が重要です。
分析のイメージ
- 右手:部品を取る → 組み付ける
- 左手:待ち → 待ち → 次工程へ
このような場合、
- 左手が有効に使えていない
- 作業の組み立て順に改善余地がある
と判断できます。
両手作業分析の特徴
- 観察しやすく、初心者でも取り組みやすい
- 手作業工程の改善に向いている
- 作業改善の「最初の一歩」として使いやすい
- 作業方法の良し悪しが直感的に分かる
活用場面
両手作業分析は、次のような場面で効果を発揮します。
- 組立作業・手作業工程の改善
- 作業時間が長い工程の動作改善
- 作業者の負担が大きい作業
- 標準作業を見直したいとき
- 新人とベテランの作業差を整理したいとき
② 微動作分析(サーブリッグ法)
概要
微動作分析(サーブリッグ法)とは、
作業動作を「最小単位の動き(動素)」に分解して分析する手法です。
両手作業分析よりも、
さらに細かいレベルで動作を捉えるのが特徴です。
サーブリッグ(Therblig)とは
サーブリッグとは、
- つかむ
- 運ぶ
- 探す
- 選ぶ
- 組み付ける
など、人の動作を構成する基本動作要素のことです。
これらの動素を使って、
- どの動作が
- どれだけ
- どんな順番で
行われているかを分析します。
何を見る手法か
微動作分析では、次のような点を見ます。
- 本当に必要な動作か
- なくせる動作はないか
- 順序を入れ替えられないか
- 動作を短くできないか
特に、
「この動き、そもそも必要?」
という問いを徹底的に投げかけます。
微動作分析の特徴
- 非常に細かく、精度の高い分析ができる
- 治具設計・自動化検討と相性が良い
- 作業改善の「詰め」に向いている
- 分析には時間とスキルが必要
活用場面
微動作分析は、次のような場面で力を発揮します。
- 高頻度・短サイクル作業
- 微小な時間短縮を積み上げたい工程
- 治具・工具の最適設計
- 自動化・省人化前の作業分析
- 両手作業分析でも改善しきれない工程
両手作業分析と微動作分析の使い分け
| 観点 | 両手作業分析 | 微動作分析(サーブリッグ法) |
|---|---|---|
| 分析レベル | 手の動き | 手・指レベルの微動作 |
| 難易度 | 低〜中 | 高 |
| 主な目的 | 手待ち・ムダの削減 | 動作そのものの最適化 |
| 向いている工程 | 一般的な手作業 | 高頻度・精密作業 |
| 改善フェーズ | 初期〜中盤 | 最終の詰め |
どちらから使うべきか?
基本は、
両手作業分析 → 微動作分析
の順がおすすめです。
いきなり微動作分析を行うと、
- 分析が細かすぎる
- 現場がついてこない
- 改善効果に対して工数が大きい
という状態になりがちです。
まず両手作業分析で大きなムダを取り、
それでも残る課題に対して微動作分析を使う。
これが、実務での王道パターンです。
まとめ 分析の細かさを使い分ける
- 両手作業分析は「手の使い方」を見る
- 微動作分析は「動作そのもの」を磨く
- 目的と工程に応じて使い分けることが重要
動作研究は、
細かく見ればよいわけではありません。
「今、どこまで見る必要があるか?」
を判断しながら使うことで、
改善はスムーズに進みます。
これが、動作研究の分析手法を使いこなすコツです。
動作研究の活用場面
- 工程分析で問題となった工程の詳細分析
- 時間研究で「ばらつきが多い」と分かった作業の改善
- 治具・工具・作業域配置の改善
- 標準作業の作成・見直し
特に、量産工場など繰り返し度の高い作業に適しています。
モーション・マインド(動作意識)の重要性
動作研究では、
モーション・マインド(動作意識)を育てることが重要です。
- この動きにムダはないか?
- もっと楽にできないか?
- 動作の違いで時間差は出ていないか?
といった視点を持ち、
より良い動作を探求し続ける心構えを指します。
分析手法を使いながら成果を出すことで、
この感性が現場に根づいていきます。
動作研究の“よくある失敗”
- 作業者のクセをムダと決めつける
- 一時的な作業状況だけを分析する
- 改善ありきで観察してしまう
- 動作改善だけに目が行き、治具・設備改善を考えない
- 分析が「作業者のダメ出し」になってしまう
- 標準化まで落とし込まない
動作研究は、改善のための手段であることを忘れないことが重要です。
まとめ|動作研究は作業改善のスタートライン
- 動作研究はIEの中で最もミクロな分析
- ムダ・ムリ・ムラは動作に現れる
- 工程分析・時間研究とセットで使う
- 疲労を減らすことで生産性を高める
- モーション・マインドを育てることが重要
工程を見て、
時間を測って、
最後に動作を磨く。
これが、IEにおける王道の改善アプローチです。