この記事で解決できる困りごと
- 人やモノが「やたら動いている気がする」理由を、感覚ではなく事実で説明できない
- 運搬・歩行が多いと言われても、どの経路がムダなのか特定できない
- レイアウトが悪そうだと感じているが、どこをどう直せばいいか分からない
- 改善提案をしても「昔からこうだから」と流されてしまう
- 製品工程分析や作業者工程分析の次に、何をやればいいか迷っている
- 運搬改善の必要性を分かりやすく説明できない
この記事でここを目指そう
- 人・モノの移動を「多い/少ない」ではなく、距離・回数・経路で語れる状態になる
- レイアウト図に流れ線を描き、運搬のムダを一目で説明できるようになる
- 「どこから改善すべきか」の当たりをつけられるようになる
- レイアウト改善・物流改善を、感覚ではなく事実ベースで検討できるようになる
- 製品工程分析・作業者工程分析とつなげて、改善を段階的に深掘りできるようになる
- 同じ図を見ながら改善の話ができる状態をつくる
現場を見ていると、
- やたらと人が動いている気がする
- モノを運んでばかりで作業が進んでいない
- 忙しそうなのに、生産性が上がらない
そんな違和感はあるものの、
「どこが問題なのか?」と聞かれると、
どうしても 感覚的な説明 になってしまいがちです。
改善がうまく進まない現場の多くは、
- 誰が
- どこを
- どんな経路で
- どれくらい移動しているのか
を、整理して把握できていません。
「歩きすぎ」「運びすぎ」と言っても、
具体的にどの経路がムダなのかが分からなければ、
レイアウト変更も、工程改善も、根拠を持って進められません。
移動や運搬は、付加価値を生まないにもかかわらず、
現場では当たり前のように発生しています。
ここを 見える化せずに改善を始める と、
効果が出にくいのは当然です。
こうした問題に対して有効なのが、
運搬経路分析(流れ線図・フロー・ダイアグラム)です。
運搬経路分析は、
- 人やモノの移動経路を
- レイアウト図上に線で描き
- 実際の動きをそのまま可視化する
分析手法です。
- 現場で
- 作業者/製品が
- どんな動きをしているのか
をレイアウト上に線で描くことで、工程表や数字だけでは見えなかった、
- 不要な往復
- 遠回りな動線
- 動線の交差・集中
といった問題が、一目で分かる形 になります。
この記事では、
- 運搬経路分析(流れ線図・フロー・ダイアグラム)とは何か
- どんな場面で使う分析手法なのか
- 初心者でも迷わず進める考え方と基本手順
- 現場での見方・改善につなげるポイント
を、実務視点でわかりやすく解説します。
運搬経路分析(流れ線図・フロー・ダイアグラム)とは?
運搬経路分析とは、
製品・部品・作業者が工場内をどのような経路で移動しているかを、
レイアウト図の上に線で描いて整理する分析手法です。
現場では、モノはただ
「必要な場所に運ばれている」ように見えますが、
実際にはその間に、
- 遠回りして運ばれている
- 同じ場所を何度も往復している
- 人やモノの流れが交差している
- 無意識のうちに長い距離を移動している
といった移動が日常的に発生しています。
運搬経路分析では、
工場レイアウト図の上に
人やモノの移動ルートを線(流れ線)として描き、
移動の実態を可視化します。
この図を
流れ線図(フロー・ダイアグラム)
と呼びます。
移動距離や線の重なりを見ることで、
運搬やレイアウトに潜む問題点を明確にできます。
※イメージ図挿入
運搬経路分析で「見える化」できること
運搬経路分析を行うと、次のようなことが明確になります。
- 人やモノがどこからどこへ移動しているか
- 移動距離が長すぎる工程はどこか
- 不要な往復や交差が発生していないか
- 工程配置が流れに合っているか
普段の現場では見逃されがちな
「移動そのもののムダ」が、
線としてはっきりと見えるようになります。
運搬経路分析は「レイアウト改善の出発点」
運搬経路分析の目的は、
いきなり設備や工程配置を変えることではありません。
- 今、実際にどんな経路で運ばれているのか
- なぜその動線になっているのか
- 本当にその移動は必要なのか
こうした ”現状の運搬の姿を正しく把握すること” が最優先です。
現状が見えれば、
「この移動は不要そうだ」
「工程の並びを変えた方が良さそうだ」
と、改善のヒントが自然と浮かんできます。
運搬経路分析は、レイアウト改善や運搬合理化を
感覚ではなく、事実に基づいて進めるための土台なのです。
なぜ運搬経路分析(流れ線図・フロー・ダイアグラム)が必要なのか?
現場改善の基本は、
現状把握 → 問題・原因の発見 → 改善案の検討
です。
この最初の「現状把握」が曖昧なままでは、
どんなレイアウト改善や物流改善も、的外れになってしまいます。
しかし実際の現場では、
- やたらと歩いている「気がする」
- 運搬が多い「ように見える」
- 忙しいのに効率が悪い「感じがする」
といった、感覚的な評価で話が進んでしまうことが少なくありません。
事実を共有する
たとえば、こんな会話に心当たりはないでしょうか。
「このライン、移動が多すぎない?」
「いや、こんなもんじゃないですか」
「運搬が多い気がするな」
「昔からこのレイアウトだし…」
このように、感覚での議論は
人によって見え方が違い、結論が出ません。
改善を進めるには、「なんとなく」ではなく、
事実で語れる状態を作る必要があります。
運搬経路分析で“現実”が見える
運搬経路分析を行い、
人やモノの移動をレイアウト図上に線で整理すると、
次のようなことが明確になります。
| 現場での感覚 | 分析後に見える事実 |
|---|---|
| 何となく歩き回っている | A工程⇔B工程を1サイクルで5往復 → 無駄な往復が多い |
| 運搬が多い気がする | 総移動距離120m/台 → 工数の大半が移動 |
| 忙しいのに成果が出ない | 付加価値作業より移動・運搬の方が長い |
感覚での評価が、
距離・回数・経路という事実に変わる。
これが、運搬経路分析の最大の価値です。
改善の「当たり」をつけるために必要
運搬経路分析を行わずに改善を始めると、
- 目についた場所だけレイアウトを変えてしまう
- 実は効果の小さい移動に手を付けてしまう
- 改善したのに、歩行距離があまり減らない
といった事態が起こりがちです。
運搬経路分析は、
- どこを何回通っているのか
- どの移動が特に長いのか
を明確にし、
「どこから手を付けると効果が出やすいか」
改善の当たりをつけるための地図の役割を果たします。
工程分析から運搬経路分析へつなぐ
運搬経路分析は、
単独で使う分析手法ではありません。
単純工程分析、製品工程分析で、
- 運搬が多そうだ
- 工程間の距離が長そうだ
と感じたとき、
その「正体」を明らかにするために使います。
- 単純工程分析:工程構成を把握する
- 製品工程分析:モノの流れと運搬回数を見る
- 運搬経路分析:実際の移動距離・経路を見る
このように、改善を段階的に深掘りするための
次の一手になります。
初心者こそ、最初にやるべき可視化
運搬経路分析は、
図面に線を引くだけ
特別な計算や知識は不要
というシンプルな手法でありながら、
改善効果が非常に大きい分析です。
だからこそ、
- 初めてレイアウト改善に関わる人
- 「運搬が多い」と言われても説明できない人
にとって、最初に取り組むべき可視化手法のひとつです。
運んでいること自体が問題だと、気づくための第一歩。
それが、運搬経路分析です。
運搬経路分析(流れ線図・フロー・ダイアグラム)の活用場面
運搬経路分析は、
現場を 「人・モノの移動経路」 という視点で捉え直し、
移動距離・往復・交差といった運搬のムダを可視化するための分析手法です。
特に、以下に挙げるような
「運搬が多そうだが、何が原因かまだハッキリしていない段階」
で力を発揮します。
単純工程分析・製品工程分析で「運搬が多そう」と感じたとき
単純工程分析や製品工程分析を行うと、
- 運搬工程がやたら多い
- 流れが遠回りしていそう
といった違和感に気づくことがあります。
運搬経路分析は、そこから一歩踏み込み、
- どこからどこへ運んでいるのか
- どのルートを何回通っているのか
をレイアウト図上に線で整理し、
「実際にどこを動いているのか」を明確にします。
工程上は同じ「運搬」でも、
距離・経路・重なり方の違いによって、
改善効果は大きく変わります。
歩行・運搬が多く、現場がバタバタしていると感じるとき
「人が常に歩き回っている」
「フォークリフトが行き交っている」
そんな現場では、
運搬経路分析が非常に有効です。
流れ線図を作成すると、
- 同じ経路を何度も往復している
- 複数の人・モノが同じ通路で交差している
といった状態が、一目で分かります。
これにより、
- 通路設計の見直し
- 設備・棚配置の変更
- 一方通行化・動線分離
といった改善テーマを、
感覚ではなく 経路という事実 をもとに検討できます。
工程間距離が長く、運搬時間がかかっているとき
工程と工程の間が離れている現場では、
- 運搬時間が読めない
- 人によって移動時間がバラつく
といった問題が起こりがちです。
運搬経路分析を行うことで、
- 1回あたりの移動距離
- 1サイクルあたりの総移動距離
が明確になり、
「そもそも、この距離は妥当なのか?」
という議論ができるようになります。
その結果、
- 工程集約
- ライン再配置
- セル化検討
など、レイアウト起点の改善につなげやすくなります。
レイアウト変更・ライン再設計を検討するとき
レイアウト変更を行う際に、
運搬経路分析を行わないまま進めると、
- 見た目がスッキリしただけ
- 実際の移動距離はあまり減っていない
という失敗が起こりがちです。
現状の流れ線図と、改善案の流れ線図を比較することで、
- 移動距離がどれだけ短縮できるか
- 交差・往復がどれだけ減るか
を事前に評価できます。
運搬経路分析は、
レイアウト案の良し悪しを判断する物差しとしても有効です。
改善の優先順位を整理し、関係者を巻き込みたいとき
運搬に関する改善は、
- 生産技術
- 製造
- 物流
- 管理部門
など、複数部門が関わることが多く、
合意形成が難しいテーマでもあります。
運搬経路分析で作成した流れ線図は、
誰が見ても理解しやすい
一目で「おかしさ」が伝わる
という特徴があります。
そのため、
- 改善の優先順位付け
- 他部署への説明
- 現場との合意形成
に非常に有効です。
「大変そう」ではなく、
「ここを何回も通っている」
という事実で話ができるようになり、
改善活動を前に進めやすくなります。
運搬経路分析の位置づけ(IE全体の中で)
運搬経路分析は、
工程分析の中でも「レイアウト・物流寄り」の手法です。
整理すると、次のような役割分担になります。
| 分析手法 | 視点 | 主な改善領域 |
|---|---|---|
| 単純工程分析 | 工程構成 | 工程数・検査数の妥当性 |
| 製品工程分析 | モノの流れ | 滞留・仕掛・運搬 |
| 作業者工程分析 | 人の動き | 工数・動作・手待ち |
| 運搬経路分析 | 移動経路 | レイアウト・動線・物流 |
特に、
- 製品工程分析で「運搬が多い」と分かった
- 作業者工程分析で「移動が多い」と分かった
その 次の一手として使うのが、運搬経路分析です。
運搬経路分析(流れ線図・フロー・ダイアグラム)の手順
運搬経路分析は、
単純工程分析・製品工程分析・作業者工程分析と同じく
「現状を事実で捉える」ための分析手法です。
ただし観察対象は
工程や作業そのものではなく、「人・モノの移動経路」
になります。そのため、
- どこからどこへ
- どんな経路で
- 何回・どれくらい移動しているか
を、レイアウト図上に線で可視化していく点が特徴です。
ここでは、運搬経路分析の基本的な手順とポイントを説明します。
STEP1:目的を決める
STEP2:対象(人・モノ)と範囲を決める
STEP3:観測方法を決める
STEP4:観測スケジュールを決める
STEP5:観測準備
STEP6:現場観測&記録
STEP7:結果まとめ・分析
STEP8:考察・改善案の検討
以下、各ステップの要点を整理します。
STEP1:目的を決める
最初に、
「なぜ運搬経路分析を行うのか?」
を明確にします。
目的が曖昧なまま進めると、
- 線は引いたが、何を見ればいいか分からない
- 移動が多いことは分かったが、改善につながらない
といった状態になりやすくなります。
目的が決まると、
「どの経路を重点的に見るべきか」
が明確になります。
<目的の例>
- 運搬距離・運搬回数を削減したい
- 人の歩行距離を短縮したい
- フォークリフト動線の安全性を高めたい
- レイアウト変更の効果を事前に確認したい
- 工程間のムダな往復・交差を洗い出したい
STEP2:対象と範囲を決める
次に、
「誰(何)が」「どこからどこまで」動くのか
を決めます。
<対象の例>
- 作業者の歩行経路
- 製品・部品の運搬経路
- 台車・AGV・フォークリフトの走行経路
<範囲の例>
- 1工程内のみ
- 工程間(A工程 → B工程)
- ライン全体
- 工場フロア全体
すべてを一度に分析しようとすると、
線が多すぎて逆に分かりにくくなります。
まずは、
- 運搬が多そうな工程
- 問題が起きていそうなエリア
など、効果が出やすい範囲から始めるのがおすすめです。
STEP3:観測方法を決める
「誰が、どのように運搬経路を観測・記録するか」を決めます。
<主な観測方法>
- 現場での目視観測
- レイアウト図を持って追跡記録
- 動画撮影・後解析
- 歩数計・距離測定アプリの活用
人の歩行経路は、
リアルタイムで追いながら線を引く方法が基本ですが、
複雑な動線の場合は動画解析が有効です。
STEP4:観測スケジュールを決める
「いつ、どの時間帯を観測するか」を決めます。
以下の点を事前に確認しましょう。
- 生産が安定している時間帯
- 段取り替え・品種切替の有無
- ピーク時間/閑散時間
運搬経路は、時間帯や生産状況によって大きく変わるため、
「いつの動きなのか」を明確にしておくことが重要です。
STEP5:観測準備
運搬経路分析をスムーズに進めるために、
事前準備が重要です。
準備1:レイアウト図を用意する
運搬経路分析では、
正確なレイアウト図が必須です。
- 設備位置
- 通路
- 棚・仮置き場
が分かる図面を用意しましょう。
準備2:記入ルールを決める
複数人で観測する場合、
線の引き方・記号の使い方を統一しておきます。
例:
- 人とモノで線の色を変える
- 往路・復路を区別する
- イレギュラー動線の表記ルール
事前に決めておくことで、
後の分析がしやすくなります。
準備3:関係者と事前すり合わせ
以下を関係者と共有します。
- 観測の目的
- 観測日時
- 観測範囲
これにより、
- 不要な作業停止
- 想定外の動線変更
といったトラブルを防げます。
STEP6:現場観測&記録
実際の現場で、
- 人・モノの動きを追い
- レイアウト図上に線を引いて
運搬経路を記録します。
<記録する主な情報>
- 移動開始点/終了点
- 移動経路
- 移動回数
- 移動距離
- 運搬手段(手持ち・台車・フォーク等)
- 観測中の気づき
「遠い」「多い」ではなく、
「どこを何回通っているか」を正確に残します。
STEP7:結果まとめ・分析
観測が終わったら、以下を整理します。
- 総移動距離
- 往復回数
- 交差・集中している通路
- 明らかに遠回りしている経路
ここで重要なのは、
線の多さ・重なりそのものが問題を示している、
という点です。
例:
- 同じ場所を何度も往復している
- 複数人が同じ通路に集中している
- 目的の割に遠回りな動線
STEP8:考察・改善案の検討(ECRS)
運搬経路分析の結果をもとに、
改善案を検討します。
ポイントは、
- 運搬・移動は付加価値を生まない
- 減らせる余地が大きい
という点です。
改善案検討には ECRS の考え方が有効です。
- なくせないか(Eliminate)
- まとめられないか(Combine)
- 順番を変えられないか(Rearrange)
- 簡単にできないか(Simplify)
例:
- 工程間距離を縮める
- 仮置き場を廃止・集約
- 一方通行化で交差をなくす
運搬経路分析が効果を発揮する場面
運搬経路分析は、以下のような場面で効果を発揮します。
-
工程間の移動距離が長いと感じるとき
-
工程配置が流れに合っていないと感じるとき
-
レイアウト変更・ライン再設計を検討するとき
-
台車・フォークリフトの動線を整理したいとき
-
人とモノの交錯による安全リスクを下げたいとき
-
運搬工数・物流工数を削減したいとき
-
改善案のレイアウト比較を行いたいとき
運搬経路分析が最も力を発揮するのは、
「移動が多そうだが、どこが悪いか分からない段階」
です。
製品工程分析・作業者工程分析との使い分け
最後に、3つの関係を整理します。
-
単純工程分析:工程構成を大づかみで見る
-
製品工程分析:モノの流れのムダを見る
-
作業者工程分析:人の動きのムダを見る
-
運搬経路分析:移動そのもののムダを見る
「工程」→「流れ」→「人」→「動線」
という順で深掘りしていくと、
改善がブレにくくなります。