この記事で解決できる困りごと
- 作業時間が長い原因が「感覚」でしか説明できない
- 作業者が忙しそうだが、どこでムダが出ているかわからない
- 両手の使い方が悪い気がするが、具体的に指摘できない
- 改善案を出しても「本当に効果あるの?」と言われてしまう
- 動作改善をやりたいが、何から見ればいいかわからない
この記事でここを目指そう
- 作業者の左右の手の動きを時系列で整理できる
- 片手待ち・空動作・ムダ動作に気づける
- 「なぜこの作業は時間がかかるのか」を構造で説明できる
- 動作改善の具体的な改善ポイントが見える
「もっと早くできるはずなんだけどな…」
「なんかムダな動きが多い気がする」
現場でこう感じることは多いですが、いざ改善しようとすると、
・どの動作がムダなのか
・どちらの手が遊んでいるのか
・なぜ時間がかかっているのか
を、言葉や数字で説明できないことがほとんどです。
この状態のままで改善案を出しても、
「それって本当に効果あるの?」
「慣れの問題じゃない?」
と言われて終わってしまいます。
そこで役に立つのが 両手作業分析 です。
両手作業分析は、
作業者の左右の手の動きを分解・可視化し、
ムダ動作や改善ポイントを明確にするための分析手法です。
この記事では、
・両手作業分析とは何か
・なぜ必要なのか
・どんな場面で使うのか
・どうやって進めるのか
を、初心者向け・現場目線で解説します。
両手作業分析とは?
両手作業分析とは、
作業者の「右手」と「左手」の動作を、それぞれ時系列で整理する分析手法です。
作業者の両手動作のプロセスを「作業」「移動」「保持」「手待ち」の4つに分類し、
それらの関連からムダを抽出してより効率的な方法を設定していきます。
現場で作業を見ていると、
人は「一連の動き」として作業しているように見えます。
しかし実際には、
・片手だけ動いている
・もう一方の手は待っている
・持ち替えが多い
・探す・置く・戻すが多い
といった細かな動作の積み重ねで作業が構成されています。
両手作業分析では、これらの動作を
・右手の動き
・左手の動き
に分解、さらに
・作業(加工)
・移動
・保持
・手待ち
の4つに分類し、作業分析図(両手作業分析図)として整理します。
その結果、
・どちらの手が遊んでいるか
・ムダな動作がどこで発生しているか
・動作の順序に問題がないか
を、一目で把握できるようになります。
動作研究における両手作業分析の位置づけ
動作研究には、代表的な分析手法が2つあります。
- 両手作業分析
- 微動作分析(サーブリッグ分析)
どちらも「人の動作」を対象にした分析ですが、
分析の細かさ(粒度)と使いどころ が異なります。
ここで、それぞれの特徴を整理しておきましょう。

両手作業分析の特徴
両手作業分析は、動作レベル で分析を行います。
- 作業者の右手・左手が
- どんな動作を
- どんな順番で行っているか
を整理し、問題点を見つけていく手法です。
特徴は次の通りです。
- 分析粒度は比較的粗い
- 目視や動画で把握しやすい
- 記号の種類が少なく、理解しやすい
- 現場で手軽に使える
サーブリッグ分析ほど細かくはありませんが、
「まず動作のムダを見つけたい」
という場面では、非常に使いやすい分析手法です。
微動作分析(サーブリッグ分析)の特徴
一方、微動作分析(サーブリッグ分析) は、
より細かい 微動作レベル で分析を行います。
作業者の両手(場合によっては身体全体)を対象に、
- 探す
- つかむ
- 運ぶ
- 組み合わせる
- 離す など、
18種類の基本動作要素(サーブリッグ) を使って、
作業を詳細に分解・分析していきます。
そのため、
- 非常に細かい改善ポイントまで見つけられる
- 最短動作・理想動作の検討ができる
というメリットがある一方で、
- 分析に手間と時間がかかる
- 現場負荷が大きくなりやすい
という特徴もあります。
両手作業分析 → サーブリッグ分析の使い分け
実務では、
いきなりサーブリッグ分析を行う必要はありません。
①両手作業分析で
- どこにムダが多そうか
- どの動作が問題か
を大まかにつかむ
②本当に効果が出そうな部分だけをサーブリッグ分析で深掘りする
という進め方が、最も効率的です。
両手作業分析は、動作改善の「入口」 として非常に優れた分析手法です。
両手作業分析は「動作改善の出発点」
両手作業分析の目的は、
いきなり改善案を出すことではありません。
・今、どんな動作をしているのか
・左右の手はどう使われているのか
という 現状を正しく把握すること が最優先です。
現状が見えれば、
「この待ちは不要そうだ」
「この持ち替えはなくせそうだ」
と、改善のヒントは自然に浮かび上がります。
両手作業分析は、
動作改善を感覚ではなく事実で進めるための土台です。
なぜ両手作業分析が必要なのか?
改善活動の基本は、
現状把握 → 問題発見 → 改善検討
です。
しかし「人の作業」に関しては、
・忙しそう
・慣れている
・早くやっているつもり
といった感覚的な評価で話が進みがちです。
事実を共有できないと改善は進まない
例えば、こんな会話はないでしょうか。
「この作業、時間かかりすぎじゃない?」
「いや、これ以上は無理ですよ」
「ムダな動きが多い気がする」
「慣れれば早くなります」
感覚の議論では、
改善の合意が取れません。
両手作業分析で“動作の現実”が見える
両手作業分析を行うと、
| 現場の感覚 | 分析後に見える事実 |
|---|---|
| 忙しそう | 左手が30%待ち状態 |
| ムダが多い気がする | 持ち替え12回/サイクル |
| 慣れの問題 | 動作順序が非合理 |
といった形で、
感覚が事実と数字に変わります。
改善の「狙い所」を見つけるために
両手作業分析を行わずに改善すると、
・見た目だけの改善
・効果の小さい改善
・やった感だけの改善
になりがちです。
両手作業分析は、
「どの動作を改善すれば、時間が縮まるか」
を見極めるための
地図のような役割を果たします。
両手作業分析が効果を発揮する場面
・作業時間短縮
・動作改善
・標準作業作成
・ラインバランス改善
・新人教育
・改善の見える化
特に、
「忙しそうだけど、なぜか成果が出ない」
そんな現場で、
両手作業分析は大きな力を発揮します。
両手作業分析で「見える化」できること
両手作業分析を行うと、次のようなことが明確になります。
・左右の手が同時に有効に使われているか
・片手待ち、空動作がどれだけ発生しているか
・持ち替え・探し・位置ズレなどのムダ動作
・作業時間が延びている真因
普段の作業観察では見落としがちな
「人の動作のムダ」が、構造として見えてきます。
両手作業分析の活用場面
両手作業分析は、
作業時間・動作のムダが問題になっている場面で力を発揮します。
作業時間が長く、生産性が上がらないとき
作業時間が長い原因は、
・作業スピード
・作業量
ではなく、
動作の構造にあることが多いです。
両手作業分析を行うことで、
・片手待ち
・非対称な動作
・不要な持ち替え
が明確になります。
動作改善・標準作業を検討したいとき
標準作業を作る際、
「今のやり方で本当にいいのか?」
を確認する必要があります。
両手作業分析は、
・誰がやっても同じ動作になるか
・ムダを含んだ標準になっていないか
をチェックする強力なツールです。
改善の優先順位を決めたいとき
両手作業分析図があると、
・どの動作を削減すれば効果が大きいか
・どこから改善すべきか
を、数字で説明できます。
改善テーマの選定や、
現場・上司への説明にも有効です。
両手作業分析で使う4種類の分析記号
両手作業分析では、
作業者の動作を以下の 4種類の基本動作 に分類して記録します。
① 作業(加工)
- 記号:〇
- 意味:一定の場所で対象物を扱う動作
例:
- 掴む
- 離す
- 置く
- 並べる
- 組み立てる
- 操作する
② 移動
- 記号:→(矢印)
- 意味:目的を持って手や対象物が移動する動作
例:
- 対象物に手を伸ばす
- 持った部品を移動させる
移動が多い場合、
レイアウトや作業順序に改善余地がある可能性があります。
③ 保持
- 記号:D
- 意味:作業を助けるために、対象物を一定の位置に保持する動作
例:
- 片手で部品を押さえる
- 動かないよう固定する
保持が多い場合、
治具化・固定方法改善のヒントになります。
④ 手待ち
- 記号:▽(逆三角形)
- 意味:手が何もせず、遊んでいる・待っている状態
例:
- 片手が次の動作を待っている
- もう一方の手の作業が終わるのを待つ
最も分かりやすいムダ動作 であり、
改善効果が出やすいポイントです。
両手作業分析の手順(8ステップ)
進め方は製品工程分析と似ています。
対象が「モノ」から「人の動作」に変わっただけです。
STEP1:目的を決める
STEP2:対象作業を決める
STEP3:観測方法を決める
STEP4:観測スケジュールを決める
STEP5:観測準備
STEP6:現場観測・記録
STEP7:結果まとめ・分析
STEP8:考察・改善案検討
以下、要点を整理します。
STEP1:目的を決める
例:
・作業時間を短縮したい
・ムダ動作を洗い出したい
・標準作業を見直したい
STEP2:対象作業を決める
・時間が長い作業
・頻度が高い作業
・ボトルネック工程
を優先します。
STEP3〜5:観測準備
・動画撮影 or 直接観測
・両手作業分析図フォーマット作成
・記入ルールの統一
STEP6:現場観測・記録
・右手/左手を分けて動作を記録
・動作の順序と時間を正確に追う
STEP7:結果まとめ・分析
・片手待ち時間
・ムダ動作回数
・左右のバランス
を整理します。
STEP8:考察・改善案検討(ECRS)
・なくせないか
・まとめられないか
・順番を変えられないか
・簡単にできないか
動作改善にも ECRS が有効です。
まとめ:両手作業分析は「動作改善の第一歩」
両手作業分析は、
- 作業者の左右の手の使い方を可視化し
- ムダ動作・片手待ちを明確にし
- 改善の狙い所を見つける
ための、動作研究の基本ツールです。
製品工程分析が
「モノの流れをつかむ分析」だとすれば、
両手作業分析は
「人の動きをつかむ分析」 です。
まずは大まかにつかみ、
必要なところだけを深掘りする。
その第一歩として、
両手作業分析は非常に強力な武器になります。