この記事で解決できる困りごと
- 工程分割とは何か分からない
- 工程分割の方法とポイントが分からない
この記事でここを目指そう
- 工程分割とは何かを説明できる
- 工程分割の方法と基本原則を説明できる
工程設計において重要なのが 工程分割 です。
工程の分け方を間違えると
- ボトルネックが発生する
- 手待ちが増える
- 生産効率が低下する
といった問題が起きます。
工程分割は単なる作業の区切りではなく、
ライン設計の成否を左右する重要な設計要素です。
この記事では
- 工程分割とは何か
- 分け方の考え方
- 実務でのポイント
を解説します。
工程分割とは
工程分割とは
作業を複数の工程に分けること
です。
具体的には、
・どこまでを1工程とするか
・作業をどの単位で区切るか
を決めていきます。
なぜ工程分割が重要なのか
工程分割でラインバランスが決まるため、工程分割が重要になります。
工程分割が不適切だと
- 作業の偏りが発生
- ボトルネックが発生
- 人員配置が崩れる
が発生し、その結果ラインが成立しません。
※ラインバランスの基礎はこちら:
工程分割の8ポイント
工程分割は、単に作業を分けることではなく、
「いかにスムーズに流れる生産ラインを作るか」を設計する重要な工程です。
ここでは、工程分割を行う際に押さえるべき基本原則とポイントを解説します。
① タクトタイムに合わせて分割する
工程分割で最も重要なのは、タクトタイムとの整合です。
各工程のサイクルタイム(作業時間)を、タクトタイム以内に収める必要があり、
タクトタイム ≧ サイクルタイム
となるように工程を分割します。
・タクトタイム ≧ サイクルタイムの場合
『お客様に引かれる間隔(需要) < 供給できる間隔(工程能力)』
となり、必要生産量を満たせます。
・タクトタイム < サイクルタイムの場合
『お客様に引かれる間隔(需要) > 供給できる間隔(工程能力)』
となってしまい、必要生産量が満たせません。

※ タクトタイムの詳細はこちら:
タクトタイムとは?意味・計算方法・サイクルタイムとの違いをわかりやすく解説
※ タクトタイムとサイクルタイムの違いはこちら:
タクトタイムとサイクルタイムの違い|生産ライン設計で重要な関係を解説
② 作業時間を均等にする
工程ごとの作業時間に大きなバラつきがあると、
ライン全体の停滞や待ちが発生します。
特に、特定の工程だけが長時間になるとボトルネックとなり、
後工程が待つ、または前工程が詰まるといった問題につながります。
そのため、工程分割では、
作業時間と負荷のバラつきを抑え、工程間のバランスを取ることが重要です。

※ラインバランスについてはこちら:
② 作業の切りやすさで分割する
工程は、物理的・作業的に無理なく分割できる単位で区切る必要があります。
例えば、明確に区切れる作業(締結、組付けなど)は分割しやすい一方、
調整作業や一連の流れで成立する作業は分割に向かない場合があります。
無理に分割すると、かえって効率低下や品質不良の原因になります。
そのため、工程分割では
「自然に切れる単位かどうか」を必ず確認することが重要です。
③ 前後関係(順序制約)を守る
作業には、必ず前後関係(順序制約)が存在します。
例えば、「部品を取り付けてから締結する」といった順序は変更できません。
一方で、順序に依存しない作業は並列化が可能です。
工程分割では、この関係を整理した上で
並列化できる作業を適切に分離することで、生産性を向上させることができます。
④ 技能レベルを平準化する
工程ごとに必要な技能レベルが偏ると、属人化が発生します。
特定の人しかできない工程があると、
人員配置の自由度が下がり、ラインの安定性が低下します。
そのため、工程分割では
できるだけ誰でも対応可能な構成にする(技能の平準化)ことが重要です。
⑤ 不良を早く検出できるように分割する
不良は、できるだけ早い段階で検出することが重要です。
後工程で不良が発見されると、手戻りや廃棄のコストが大きくなるため、
次工程に良品のみを流す仕組みを構築すると、ラインが安定します。
そのため、工程分割では
不良が発生する可能性のある工程の直後に、検査や確認を配置することが有効です。
⑥ 設備制約を踏まえて分割する
現場では、設備の制約を無視することはできません。
例えば、専用設備が必要な工程は、その設備単位で工程が決まります。
また、人作業と設備作業の切り分けも重要なポイントです。
そのため、工程分割では
設備条件を前提とした現実的な構成にする必要があります。
⑦ 変動(ばらつき)を吸収できる構成にする
実際の現場では、作業時間には必ずばらつきが存在します。
このばらつきを考慮せずに工程分割を行うと、
ライン停止や滞留が発生しやすくなります。
そのため、工程分割では
多少の変動があっても流れが止まらない構成にすることが重要です。
⑧ 「分ける」のではなく「流れを作る」
工程分割で最も重要な視点は、
単に作業を分けることではありません。
本質は、
「スムーズに流れる生産の仕組みを作ること」です。
必要であれば作業順を見直し、工程を再構成することも重要です。
工程分割の具体例
ここでは、前章で解説した工程分割の基本原則に沿って、
タクトタイムを達成する具体例を解説します。
工程分割は流れを最適化し、ムダを削減するための手段として活用することが重要です。
前提条件
- 製品:小型ユニットの組立
- タクトタイム:60秒
- 作業者:1名
- 1つの工程内での作業内容:
①部品取り
②位置決め
③締結(ネジ止め)
④外観確認
Before(改善前)
- 部品取り:15秒
- 位置決め:20秒
- 締結:30秒
- 外観確認:10秒
- 合計:75秒 → サイクルタイム(工程時間)がタクトタイムを超過
この状態は、工程分割の基本原則から見ると以下の問題(基本原則とのズレ)があります。
- タクトタイムを満たしていない(①タクト不適合)
- 作業負荷が1工程に集中している(④負荷バランス不良)
- 作業の見える化ができていない(②分離不足)
ここから、工程分割のポイントに沿って改善を行います。
① タクトタイムに合わせる
まずは現状(75秒)をタクトタイム(60秒)以下にする必要があります。
改善目標:△15秒が必要です。
② 作業を分解し、分離性を確認する
作業を工程単位で分解し、それぞれの特性を整理します。
- 部品取り:動作・配置に依存
- 位置決め:精度・治具に依存
- 締結:設備・手順に依存
- 外観確認:基準・やり方に依存
特に時間が長い工程(締結)に注目し、どこが改善できるかを明確化します。
ボトルネック:締結(30秒)
③ 前後関係を見直す(流れの最適化)
作業順を見直し、ムダな動きを削減します。
- 部品取りと位置決めの動線を短縮
- 無駄な持ち替えを削減
流れを整理してロスを削減します。
④ 技能に依存しない方法にする
作業を“やり方”で短縮できないか検討します。
- 誰でも同じようにできる方法へ変更
- 手順の標準化
⑤ 不良を早く検出できる構成にする
外観確認のポイントを整理し、
過剰な確認や重複チェックを削減します。
⑥ 設備・治具を活用する
- 位置決め治具の導入
- 電動工具の活用
人の作業時間を短縮します。
⑦ ばらつきを抑える
- 作業手順を統一
- 調整作業を減らす
安定してタクト内に収めます。
⑧ 流れとして再構成する
すべてを踏まえ、作業全体を再構成します。
After(改善後)
- 部品取り:10秒(動線改善)
- 位置決め:15秒(治具化)
- 締結:20秒(工具改善)
- 外観確認:10秒(適正化)
合計:55秒 → サイクルタイム(工程時間)がタクトタイムに収まっている状態
改善結果(原則との対応)
- ① タクト内達成 → OK
- ② 作業分解 → ムダ明確化
- ③ 流れ改善 → 動作削減
- ④ 負荷改善 → ボトルネック解消
- ⑤ 標準化 → 属人化低減
- ⑥ 品質維持 → 過不足なし
- ⑦ 動線改善 → 効率向上
- ⑧ 治具活用 → 時間短縮
- ⑨ ばらつき低減 → 安定化
- ⑩ 再構成 → 全体最適化
まとめ
工程分割は、単に作業を分けることではなく、
基本原則に沿ってムダを削減し、流れを最適化することが本質です。
人を増やさなくても、
- 分解
- 見直し
- 再構成
を行うことで、タクトタイム達成は可能です。
「分ける → 気づく → 改善する」
この流れが、工程分割の使い方です。
工程分割と工程設計の関係
工程設計はの流れで進め、工程分割はその中核に位置します。
タクト
↓
工程分割
↓
工程能力
↓
ライン成立の確認
※ 工程設計の全体像はこちら:
工程設計とは|生産ライン設計の基本と正しい進め方【8ステップで解説】
よくある工程分割の失敗例
ここまで、工程分割の基本原則に沿った改善例を解説してきました。
しかし実際の現場では、工程分割のやり方を誤ることで、
かえって生産性を下げてしまうケースも多くあります。
ここでは、よくある失敗例を具体的に解説します。
失敗例①:タクトタイムを無視して分割
工程分割はしているものの、
一部の工程がタクトタイムを超えているケースです。
例:タクトタイム60秒
- 工程①:65秒
- 工程②:30秒
問題点
工程①がタクトを超えているため、
この工程がボトルネックとなり、ライン全体が成立しません。
後工程は必ず待つことになり、
結果として生産能力は工程①に制約されます。
1つでもタクトオーバーの工程があればラインは成立しません。
原因
- 分割すること自体が目的になっている
- タクトタイムとの整合確認が不十分
補足
実務では、タクトタイムぴったりでも危険です。
例:
- 工程①:60秒
- 工程②:55秒
一見問題なさそうですが、
実際はばらつきによって工程①が簡単に遅れ、
ライン停止のリスクが高くなります。
現場では「タクトタイム−α(余裕)」を持たせる設計が重要です。
失敗例②:分けすぎ(過剰分割)
細かく分けすぎて、かえって非効率になるケースです。
問題点
- 工程間の受け渡しが増える
- 移動・持ち替えが増加する
- 作業が断続的になり効率低下
工程を分割すれば良いわけではないです。
原因
- 「細かく分ける=良い」と誤解している
- 作業の流れを考えていない
失敗例③:負荷バランスを無視する
工程ごとの作業時間に偏りがあるケースです。
例:
- 工程①:20秒
- 工程②:50秒
問題点
工程②がボトルネックとなり、
前後工程に待ちや滞留が発生します。
ライン全体の効率が最も遅い工程に引きずられます。
原因
- ボトルネックの認識不足
- 工程ごとの時間を見ていない
失敗例④:順序制約を無視する
作業の前後関係を考えずに分割するケースです。
問題点
- 手戻りが発生する
- 無駄な動きや二度手間が増える
流れが崩れると効率は大きく低下します。
原因
- 作業の本質を理解していない
- IE的な分解ができていない
失敗例⑤:人に依存した工程構成
特定の人しかできない工程を前提に分割してしまうケースです。
問題点
- その人がいないとラインが回らない
- 教育に時間がかかる
- 柔軟な人員配置ができない
属人化はラインの不安定要因になります。
原因
- 技能に依存した設計
- 標準化不足
失敗例⑥:物流・動線を無視する
作業だけを見て分割し、モノの流れを考慮していないケースです。
問題点
- 無駄な移動が増える
- 部品供給がしづらくなる
- 作業効率が低下する
工程分割は“作業”だけでなく“流れ”で考える必要があります。
原因
- レイアウトと切り離して考えている
- 現場目線が不足している
失敗例⑦:とりあえず増員する
タクトオーバー時に、すぐに人を増やして対応するケースです。
問題点
- ムダが残ったまま固定化される
- 人件費が増加する
- 生産性が向上しない
改善ではなく“対処”になっています。
原因
- 短期対応に偏っている
- 分解・分析不足
まとめ
工程分割の失敗の多くは、
「分けること」が目的になってしまうことにあります。
重要なのは、
- タクトタイム
- 負荷バランス
- 流れ
- ムダ
といった基本原則に沿って考えることです。
工程分割はあくまで手段であり、
本質は「最適な流れを作ること」点にあります。
工程分割は見える化する
工程分割は、頭の中では正しく判断できません。
実務では
- 山積み表
- 工程一覧
- ラインバランス
を使って設計します。
※ 山積み表とはこちら:
まとめ
- 工程分割とは「作業の区切りを決めること」
- ラインバランスに直結する
- タクトに合わせることが最重要
タクト
↓
工程分割
↓
ライン成立
で考えることが重要です。
工程分割は
- 人員配置
- 生産効率
- ボトルネック
に直結します。